遠方への転勤時、持ち家は売却か?賃貸か?

2つの住宅模型による、賃貸と売却の選択を表すイメージ画像
遠方への転勤が決まった場合、大きな検討事項に「自宅(持ち家)をどうするか」ということが挙げられます。単身赴任ではなく家族全員で転居する場合は、貸すか売るかという二択になるでしょう。最善の選択ができるよう、遠方への転勤が決まった際に考えるべきことをまとめました。

家族みんなの生活を考える

家族で持ち家に住んでいて、世帯収入を支える人が遠方に転勤することになるというのは、かなり大変な事態です。もしも住まいを購入したばかりという場合、まず家をどうしようという考えが頭の中で先行してしまうかもしれません。奥様(パートナー ※以下省略)の仕事の状況や子供の年齢によっても違ってきますが、「せっかく買った家だから」と、単身赴任を選ぶ家庭もあるでしょう。でも判断、選択の軸になるのは家ではなく、家族一人ひとりの今の生活と将来の展望です。そこを間違えると後々悔やむことになりますから、よく家族で話し合い、熟考することをおすすめします。

 

まずは、家族の状況を冷静に判断していきましょう。重要なポイントは、子供の学校と奥様の仕事です。引っ越した場合、子供の就学状況にどう影響するのか、現在の友達関係などにとらわれず、上級学校への進学(大学まで)のことと、赴任期間の見通しとを合わせて考えましょう。国内か海外かによっても異なりますが、いずれにしても将来の家庭の在り方と子供の人生を左右する重要な判断になります。

 

奥様の仕事については、収入面への影響が大きな検討要素になります。転居先でも同様の職種で働けるのか、あるいは同程度の収入を見込める転職先がありそうか、もしくは一旦働かなくても大丈夫かということを考えることになるでしょう。もちろん奥様の人生の中での、現職の重要性も最大限考慮すべきでしょう。

 

決定までのプロセスとして大切なのは、将来にわたって家族をどういう形にしたいのかということと、その中で家族一人ひとりの意見や希望を聞いているかということです。その上で最良だと思える判断をすることが、将来的な後悔を減らすことにつながると考えられます。そのために、具体的に問題を掘り下げて話し合いましょう。

持ち家を賃貸する場合

持ち家から4人家族が転居することを表したイラスト

家族全員で転居すると決めた場合には、持ち家をどうするかという問題が発生します。赴任期間や諸条件によって違ってきますが、選択肢をしては大きく二つになります。貸すか売るかです。

 

まず、貸す場合について見ていきます。持ち家を賃貸するメリットとしては、まず「家賃収入が得られる」ことが挙げられます。住宅ローンの支払い中ならば、その返済費用に充てられます。住宅ローンの支払いがないのであれば、転居先での費用のほか、貯蓄などさまざまな用途に回せます。

 

もう一つのメリットは、赴任期間が終わり転勤先から戻ってきたときに、元の持ち家に住めることです。思い入れがあり、家族の思い出が詰まっている家にまた住めるのはうれしいことでしょう。ご近所との付き合いや家族それぞれの友好関係が再開できるのも大きいですね。

 

一方、デメリットも理解しておかねばなりません。第一に「空室リスク」があります。持ち家を賃貸に出しても借り手がつかない、空室の期間が発生してしまうというリスクです。この場合、家賃収入がゼロなので、住宅ローンと転勤先の家賃の支払いを二重で負担する恐れがあります。また、持ち家には固定資産税が課せられているので、毎年その支払いが発生します。自分で住んでいない場合は、新築住宅などに適用される税額の軽減措置も適用外になります。

 

次に「トラブル発生リスク」があります。入居者の家賃滞納、家屋や付帯設備の損傷といったトラブルは常に起きる可能性があり、発生時には大家として事の対処に当たらねばなりません。こういった賃貸する上での管理が煩わしい場合は、不動産管理会社に業務委託ができますが、当然その分のコストがかかります。

 

もう一つ、「再度居住できないリスク」があります。赴任期間が満了し、元の職場などに戻って来たとしても、借主に退去の意思がなければ、貸主の都合で立ち退かせることはできません。借地借地法による借家権では、借主の住み続ける権利が守られているからです。つまり、普通借家契約では、「貸主がまた住みたいから」という理由では、借主に立ち退いてもらうための「正当な事由」になりません。これを回避するためには契約形態を「定期借家契約」にして、契約時に定めた期間で必ず退去してもらうという方法があります。ただし、これには、当初予定していた赴任終了時期と定期借地契約の満了時期がずれてしまうという、別のリスクが発生するので、期間設定は慎重に行いましょう。

持ち家を売却する場合

続いて、持ち家を売却する場合について見ていきます。メリットとしては、まず「住宅ローンと転勤先家賃の二重負担からの解放」が挙げられます。持ち家の住宅ローンを抱えた上に、転勤先の家賃を支払うことはかなりの負担になります。仮に賃貸して家賃収入が得られるにしても、必ずしも収支がプラスになるとは限りませんし、空室のリスクも常にあります。持ち家を売却することで、これらから解放されます。ただし、売却価格がローン残高を下回る場合は、差額を預貯金などから工面する必要があります。反対に、もしも高く売れて売却益(譲渡所得)が生じた場合には、譲渡所得税がかかります。

 

もう一つのメリットとして、「新たな暮らしが始められる」ということがあります。発想を変えれば、赴任期間が終わって戻ってきたときには持ち家を所有していないのですから、そのときの家族の状況や要望に合わせた場所・建物を選び直して住むことができるわけです。

 

一方、デメリットとしては、持ち家のローン残債が一括返済できない場合は売却できないということがあります。住宅ローンを組んでいる場合、持ち家に金融機関の抵当権が設定されています。抵当権は住宅ローンが完済されない限り、抹消ができません。わざわざ抵当権付きの物件を買う人はいないので、ローンの残債を支払えない場合は、持ち家の売却はまずできないことになります。

 

持ち家がすぐに売れるとは限らない、ということもデメリットになります。売却に時間がかかれば、その間住宅ローンの支払いは続きますし、維持費もかかります。仮に赴任した後に売却を進めることになると、仲介を依頼した不動産会社に全てお任せという形になります。遠隔ではなかなかチェックし切れないので、不動産会社を信用するということが前提になるでしょう。

 

以上、賃貸・売却それぞれの場合を見てきましたが、当初の段階で、赴任期間や戻って来たときの状況がどれくらい見通せるかによって、随分変わりそうです。家族の将来像を含めて、複数の判断材料から慎重に検討することが大切です。

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